新・相続の基礎知識⑦―特別寄与料の支払請求及び特別縁故者に対する財産分与―
―目次― 第1 相続人以外の特別寄与者による特別寄与料の支払請求 第2 相続人の不存在 第3 特別縁故者に対する相続財産の分与 |
▎▎第1 相続人以外の特別寄与者による特別寄与料の支払請求
妻が夫の母親である被相続人の介護に尽力した場合や、被相続人のいとこが事業に携わった場合であっても、被相続人の息子の妻や、被相続人のいとこは相続人ではないため、それらの「特別な寄与」によって被相続人の財産が増加しても、相続において有利に考慮されることはありません(なお、前章で紹介した、寄与分の算定にあたり考慮される余地がある場合もあります。)。
そこで、特別な寄与にあたる行為を行った被相続人の親族(特別寄与者)は、相続開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払を請求することができます(民法1050①。令和元年7月1日以降に生じた相続に限られます。)。ただし、親族であっても、相続人、相続の放棄をした者及び相続人の欠格事由(同法891)に該当し又は廃除によってその相続権を失った者及び6親等内の血族、3親等内の姻族以外の者は特別寄与者にはなり得ません。
ここで、特別寄与料の支払について、当事者間で協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます。ただし、特別寄与者が相続開始及び相続人を知ったときから6か月を経過したとき、又は相続開始時から1年を経過したときは、請求することはできません(民法1050②)。また、特別の寄与に関する審判事件を本案とする保全処分を行うこともできます(家事事件手続法216の5)。
▎▎第2 相続人の不存在
被相続人が死亡し、相続が開始した場合に、相続人がいるのかどうか明らかではないとき、被相続人の財産は法人とみなされます。これを「相続財産法人」といいます(民951)。相続財産法人には、利害関係人等の請求により、家庭裁判所から相続財産の清算人が選任されます(民952①)。また家庭裁判所は、清算人を選任したこと及び、相続人がいる場合には期間内に権利を主張すべきことを公告し(同②)、清算人は被相続人の債権者に対して請求の申し出をするべきことを公告します(同957①)。なお、清算人が選任された後において、相続人の存在が明らかになった場合には、相続財産法人は成立しなかったものとみなされ(民955)、清算人の業務は、当該相続人が相続を承認した時点をもって終了します(民955。なお、終了に伴う業務は行います(同956①)。
相続財産の清算人に対して、被相続人に債権を有していることの申し出があった場合、申し出のあった債権の額に応じて、相続財産を按分して弁済します(民957②)。その後、残余財産があり、相続人として名乗り出る者がいなかった場合には、残余財産は国庫へ帰属することになります(民959条)。
▎▎第3 特別縁故者に対する相続財産の分与
被相続人の相続人の存在が明らかではなく、家庭裁判所による公告の期間にも相続人からの申し出が無かった場合において、「相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があった者」(特別縁故者)の請求によって、相続財産の全部または一部を特別縁故者に分与することができるものとされています(民958の2①)。なお、この請求は、家庭裁判所による公告で定められた期間の満了後、3か月以内に行う必要があります(同②)。
特別縁故者に該当するかどうかは、形式的な親族関係・血縁関係の有無ではなく、生前の被相続人との関係を踏まえた具体的な判断がされることになります。また、特別縁故者は自然人には限られず、法人も認められます。
特別縁故者に対する分与は、遺言を除き、被相続人死亡時に生じる財産の移転により、法律上の身分関係を有しない者が財産を取得できる制度ではありますが、前提として被相続人に相続人が存在しないことが必要であるため、利用できる幅は限られています。
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