相続の手引き⑧ー廃除

相続人の廃除とは、相続人に、相続欠格のような重大な問題はないものの、一定の問題がある場合に、被相続人の意思により、家庭裁判所が推定相続人の相続資格を奪う制度をいいます(民法892~895条)。

廃除は、遺留分を有する推定相続人(配偶者、子、直系尊属)についてのみ認められています。これは、遺留分を有しない推定相続人(兄弟姉妹)については、自己の財産を渡したくないのであれば、遺言により自己の財産をその者に渡さないようにすれば足りるからです。

廃除の方法としては、生前の請求による方法と遺言による方法があります。

ⅰ)生前廃除

 被相続人は、生前に推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができます(民法892条)。

ⅱ)遺言廃除

 被相続人は、遺言により廃除の意思を表示することもできます。遺言廃除では、遺言が効力を生じた後に、遺言執行者が遅滞なく家庭裁判所に廃除の申立てをします(民法893条)。

遺言廃除をする場合、遺言に廃除の意思表示を明示する必要があります。ただし、「廃除する」旨の記載がない場合であっても、遺言作成の経緯などから客観的に廃除の意思が認められる場合には、廃除の請求ができると解されています。

 推定相続人の廃除事由は、①被相続人に対して虐待をし、または重大な侮辱をした場合、②著しい非行があった場合です。裁判所は、被相続人の宥恕、相続人の改心等の諸般の事情を総合的に考慮して、廃除事由に該当する事実が存在し、廃除が相当であるかを判断します。

 廃除の審判が確定した場合、被廃除者は相続の資格を失いますが、被廃除者に子がいる場合には、代襲相続が生じます(民法887条2項)。

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