

会社内部紛争には、役員報酬等を巡る紛争、取締役の地位・解任を巡る紛争、役員の責任を巡る紛争、経営権獲得を巡る紛争、株主権の帰属を巡る紛争など様々なものがありますが、対立する当事者によって整理すると、取締役(元取締役も含みます。)と会社との間の紛争(類型Ⅰ)、株主と会社(現経営陣)との間の紛争(類型Ⅱ)、株主と取締役との間の紛争(類型Ⅲ)、株主と株主との間の紛争(類型Ⅳ)の4類型に分けることができます。
なお、上記4類型により厳密に分類することが困難な複数の当事者が関係する類型の紛争もあり、所有と経営が一致しているいわゆる同族会社においては、株主が取締役を兼ねている場合も多く、あらゆる内部紛争の実態は、株主間の対立(類型Ⅳ)の様相を呈している場合も多いかと思料されますが、本項では便宜上、各紛争において特に利害関係の強い者同士を取り上げ、上記4類型に分類して会社内部紛争について説明します。
株主対取締役の構図を取る紛争類型としては、解任の訴えと株主代表訴訟が挙げられます。
取締役は、原則として株主総会普通決議によっていつでも解任することができます。
そして、50%を超える議決権を保有していない株主であったとしても、解任の訴えによって、取締役の解任を争うことができます。
「解任の訴え」は、取締役の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、当該取締役を解任する旨の議案が株主総会において否決された(種類株主の拒否権により決議が効力を生じない場合を含む。)とき、総株主の100分の3(これを下回る割合を定款で定めることもできます。)又は発行済株式の100分の3(これを下回る割合を定款で定めることもできます。)以上の株式を有する株主が、当該株主総会の日から30日以内に、訴えをもってその取締役の解任を請求することができます。
また、取締役の解任の訴えに先立って又はこれと共に、解任対象の取締役について職務執行を停止させる手続である「職務執行停止の仮処分」を申し立てることができ、併せて当該取締役に代わって取締役の職務を行う者を選任する「職務代行者選任の仮処分」を申し立てることもできます。
「株主代表訴訟」とは、個々の株主(公開会社においては原則として6ヶ月前から引き続き株式を有する株主)が、株式会社のために、株式会社に対する役員等の責任を追及する訴訟をいいます。
株主代表訴訟の提起を意図する株主は、株式会社に対し、原則として役員等の責任追及の訴えの「提訴請求」を行う必要があります。この際、株主は、会社に対し、提訴しない場合には提訴をしない理由を書面等により通知するよう請求することができます。
提訴請求は、書面等により行う必要があり、被告となるべき者、請求の趣旨及び請求を特定するのに必要な事実、提訴請求の受領権限を有する名宛人をそれぞれ記載しなければなりません。
提訴請求の受領権限を有する名宛人は、被告となるべき者が取締役(元取締役を含む。)である場合には、監査役設置会社では監査役(監査等委員会設置会社では監査等委員、指名等委員会設置会社では監査委員)となり、監査役非設置会社では代表取締役となると解されています。ただし、被告となるべき者が代表取締役自身である場合には、名宛人は代表取締役以外の取締役になると解されます。
提訴請求書を受領した株式会社が、60日以内に取締役に対し責任追及訴訟を提起しなかったときは、株主は、会社のために株主代表訴訟を提起することができます。
なお、株主代表訴訟の提起にあたっては、情報収集のために、類型Ⅱにおいて記載した各種情報収集手段が利用されることがあります。
上述したとおり、代表訴訟提起にあたっては提訴請求という手続が必要であって、有効な提訴請求がなされない場合に代表訴訟を提起したとしても、訴えが却下されてしまうおそれがあります。
そして、役員の負担する損害賠償債務も時効によって消滅することがありますので、仮に訴訟が却下されてしまうと、改めて手続を履践して代表訴訟を提起したとしても、時効が完成していて請求が棄却されてしまうことにもなりかねません。
このように提訴請求は重要な手続きですので、株主代表訴訟を提起しようと考えている株主としては、代表訴訟に明るい弁護士に依頼することをお勧めします。
また監査役や取締役としても、株主代表訴訟に適切に対応するためには、高度に専門的な知見と経験を要するため、提訴請求を受けた時点で弁護士に相談・依頼すべきといえます。