相続の基礎知識㊱-遺産分割に関する見直しⅢ-
4 遺産の一部分割
遺産の分割の協議又は審判等について定める民法907条が、実務上、先行して一部分割を行うことが許されると解されていたものの、明文上明らかではなかったことから、一部分割を認める文言に改正されました。遺産分割事件の早期解決のためには、争いのない遺産について、一部分割を行うことが望ましい場合もあると考えられるためです。
ただし、一部分割により他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合には、一部分割を家庭裁判所に請求することはできません。(民法907条②ただし書)。すなわち、特別受益等について検討し、代償金、換価等の分割方法を検討した上で、適正な遺産分割を達成し得る明確な見通しが得られない場合には、一部分割は認められません。
例えば、一部分割によって相続人の一人に具体的相続分を超過する遺産を取得させることとなるおそれがある場合であっても、残りの遺産を分割する際に、当該遺産を取得した相続人が代償金を支払うことが確実視できるような場合であれば、一部分割を行うことも認められると考えられます。
<続く>