相続の手引き㉓ 療養看護型の寄与分

相続人が被相続人の療養介護を行ったことによって介護費用などの支出をなくし財産維持に貢献した場合には寄与分が認められる場合があります。

例えば、共同相続人の一人は被相続人が死亡するまでの4年間、認知症を患い、要介護度が3の被相続人を自宅で看護したという場合です。

1 療養看護の必要性

被相続人に対する療養介護は特別の寄与と認められ得る一つの類型とされています(民法904条の2第1項)が、その療養看護は身分関係に基づく通常の貢献の程度を超える寄与であることが必要とされています。

そして、療養看護型の場合において、特別の寄与と認められるかの判断に当たっては療養看護の必要性が考慮されます。

実務上、療養看護の必要性に関しては要介護度2以上であるかが目安とされ、このような介護の必要性が高いと認められる被相続人を自宅で療養していたときには特別の寄与と認められると考えられます。一方で、入院中の付添看護については、親族として当然なすべきものであって通常の貢献の程度を超えるものではないといえ、基本的には寄与分は認められません。

2 寄与行為と財産の維持・増加との間の因果関係

また、寄与分が認められるためには、特別の寄与を行い、それによって被相続人の財産の維持又は増加という効果が生じていること(寄与行為と財産維持・増加との間の因果関係)が必要です(民法904条の2第1項)。

そのため、看護によって被相続人が精神的慰安を与えたというだけでは寄与分は認められず、相続人の看護行為によって職業看護人に対して支払うべき看護費用の支出を免れたことが必要です。

3 具体的な寄与分の算定

現在は介護保険における「介護報酬基準」が一般的基準として用いられており、報酬相当額に療養看護の日数を乗じ、さらにそれに裁量的割合を乗じて算出します。

ページトップへ戻ります