相続の手引き⑯ 遺言において特定の相続人に相続させるとされていた財産が存在しない場合における遺言の有効性
民法上の方式に従って作成され形式的に整った遺言であっても、例えば、遺言書作成後に相続させるとされていた財産が滅失した場合や、もともと存在しない地番の土地を遺贈の対象としている場合には、実体上の理由から遺言が無効と判断される場合があります。
この点、判例は、遺言の解釈に当たっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく遺言者の真意を探求すべきものであるとして、多数の条項のうちの特定の条項を解釈するに当たっても、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況等を考慮して当該条項の趣旨を確定すべきものであるとしています(最判昭和58年3月18日裁判集民138号277頁)。
そのため、上記の例のように、もともと存在しない地番の土地が遺贈の対象として記載されていたとしても、遺言書の全記載との関連等から遺言書を解釈した結果、その地番は誤記に過ぎず不動産が特定できるような場合には遺言が有効となると考えられます。