相続の基礎知識㉙-配偶者居住権Ⅱ-
(3)配偶者居住権の価値評価
配偶者居住権は、遺産分割において配偶者が取得する財産となり、相続税の課税対象となることから、その財産的価値を評価しなければなりません。そこで、配偶者居住権の価値評価については、法制審議会民法(相続関係)部会において事務当局より簡易な評価方法が示されています(部会資料19-2)。例えば、建物の場合、建物の現在価値から負担付所有権の価値を控除したものを配偶者居住権の価値とする考え方です。負担付所有権の価値は、建物の耐用年数、築年数、法定利率等を考慮し配偶者居住権の負担が消滅した時点の建物の価値を算定した上、これを現在価値に引き直して求めることとされています。実務上は、相続人間で合意が得られた場合には、この簡易な評価方法が用いられることになると予想されます。
<配偶者居住権の簡易な評価方法>
○長期居住権の価額
= 建物の価額 - 長期居住権付所有権の価額 ■(固定資産評価額)
○長期居住権付所有権の価額
= 建物の価額 × 法定耐用年数-(経過年数+存続年数) ×ライプニッツ係数 ■(固定資産評価額) 法定耐用年数-経過年数
※法定耐用年数
法定耐用年数は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年3月31日大蔵省令第15号)において構造・用途ごとに規定されています。
※ライプニッツ係数
ライプニッツ係数は、令和2年4月1日の改正債権法の施行に伴い、法定利率が年5%から年3%に変更となるため、ライプニッツ係数も変動することすることに注意が必要です。
※長期居住権の存続期間が終身である場合は、簡易生命表記載の平均余命の値を使用します。
(例)築20年、鉄筋コンクリート造、固定資産税評価額2000万円のマンションの一室を対象に、配偶者(女性、70歳)に対し、存続期間20年の長期居住権を設定した場合
(※小数第4位以下は四捨五入、令和2年4月1日以降のライプニッツ係数による)
(※70歳女性の平均余命=約20年、ライプニッツ係数=約0.554)
・長期居住権付所有権の価値
=2000万円×0.554
≒2000万円×0.144
=286万円
・長期居住権の価値
=2000万円-286万円
=1714万円
配偶者居住権等の評価については、国税庁のホームページをご覧下さい。
<続く>