相続の基礎知識⑨-相続の承認と放棄Ⅱ-
第4 限定承認
1 限定承認とは
被相続人である故人には財産もあるものの、どうやら借金もあるようであり、どちらが多いかわからない。財産の方が多ければ相続したいが、負債の方が多ければ相続したくない。
このような場合に、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の負債を弁済することを留保して相続を行う方法が限定承認です(民法922条)。
2 限定承認の手続
限定承認は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に、限定承認の申述書や財産目録を提出して行います。この際、相続人が複数である場合は、全員が共同して限定承認の申述をしなければなりません(民法923条)。
また、限定承認を行った場合、相続人は、被相続人の債権者や被相続人から遺贈を受けた者に対して、限定承認を行ったことと、一定の期間内に債権の請求をすべきことを官報に公告しなければなりません(民法927条1項)。加えて、上述の一定期間内に債権者からの請求があった場合、期間内に請求のあった債権者に対して、相続財産から、債権額の割合に応じて弁済を行う必要があります。
限定承認の申述も、相続の放棄と同様に、相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に行わなければなりません。この期間内に相続の放棄ないし限定承認の手続を行わなかった場合、相続を承認したものと扱われます(民法921条2号)。
もっとも、限定承認や相続の放棄を行うにおいては、被相続人の財産を調査した上での慎重な判断が必要となりますので、家庭裁判所に対して期間の延長を請求することができます(民法915条2項)。
3 限定承認にあたって気をつける点
相続放棄と同様に、限定承認を行う場合においても、期間の制限があることや、相続財産の一部を処分した場合、相続を承認したものとみなされることに注意する必要があります。さらに、限定承認は相続人全員で行う必要があることにも注意が必要です。
また、限定承認は、一見、便利な制度に見えるものの、限定承認の申述後に行わなければならない手続が複雑であり、実際に限定承認を行うに際しては、事前に弁護士に相談することが有益です。
加藤&パートナーズ法律事務所(大阪市北区西天満)では、関西を中心に非上場株式が関わる相続(遺産分割、遺留分侵害額請求等)、事業承継(遺言、株主対策、規程類整備等)、非上場株式の換価・売却に関するご相談・ご依頼をお受けしております。
<続く>