相続の基礎知識⑥-法定相続人とその順位Ⅵ-

▎▎非嫡出子の法定相続分

 非嫡出子(婚外子)とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子を意味します。平成25年改正前の民法900条4号ただし書は、非嫡出子の法定相続分を、嫡出子(婚姻関係にある男女の間に生まれた子、婚内子)の法定相続分の2分の1と定め、非嫡出子と嫡出子との間に差を設けていました。このような差が生まれた理由は、正当な婚姻を尊重することにあるといわれていました。

 この点、最高裁は、両者の差については合理的な根拠があるとして、両者の差を定めた民法900条4号ただし書は憲法に違反しないとの判断を下していました(最大決平成7年7月5日・民集49巻7号1789頁他)。

 しかし、両者の間に差を設けることには強い批判もあり、下級審判決では両者の差を定めた民法900条4号ただし書は、憲法に違反するとの判断を下すケースもあり、またその後の最高裁も結論としては合憲とするものの、その内容からするといつ判例を変更して違憲と判断したとしても何ら不思議はない状況でした。

 そして、平成25年9月4日、最高裁大法廷は、家族形態の多様化やそれに伴う国民の意識の変化などから、父母が婚姻関係になかったという子にとっては自ら選択する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるとの考えが確立されてきているとして、両者の差を定めた民法900条4号ただし書は、遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項(法の下の平等)に違反するとの判断を下しました(最大決平成25年9月4日民集67巻6号1320頁)。

 上記最高裁決定を受けて、平成25年12月5日には民法900条4号ただし書の該当部分を削除する「民法の一部を改正する法律案」が国会で可決成立し、平成25年9月5日以降に開始した相続については、非嫡出子についても嫡出子と平等に相続分が認められるようになりました。

 嫡出子と非嫡出子がいる場合、感情のもつれから争いとなる事例が多いのですが、法定相続分及び遺留分も平等であることを前提に紛争を回避するように考慮した相続対策をする必要があります。

<続く>

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