相続の手引き⑥ー限定承認がある場合

限定承認とは、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることをいいます。すなわち、相続した財産の範囲内で被相続人の債務等を弁済し、残余があれば相続できるという制度です。

限定承認は共同相続人の全員が共同してのみ行うことができます(民法923条)。相続人のうち一部だけが限定承認して、他の者が単純承認するということはできません。

限定承認の申述は、相続開始を知った時から3か月以内に行う必要があります(民法924条、915条1項)。相続人のうち1人でも熟慮期間内であれば共同相続人全員で限定承認をすることができるとされています(東京地判昭和30年5月6日下民6巻5号927頁)。一方、相続人のうち1人でも限定承認前に民法921条所定の法定単純承認に当たる行為をした場合には、他の相続人も限定承認を行うことができなくなるとされています(富山家審昭和53年10月23日判時917号107頁)。

限定承認者が数名いる場合は、相続人の中から家庭裁判所が相続財産清算人を選任し(民法936条1項)、相続財産清算人が相続財産の管理や債務の弁済に必要な一切の行為を行うことになります(民法936条2項)。これに対し、限定承認者が1名の場合は、当該相続人が相続財産の管理等を行うことになります。

ページトップへ戻ります