相続の手引き㊷ー相続させる遺言がある場合の特別受益該当性

【事例】

被相続人Xには、子A、Bがいる。

Xの死亡時の遺産には、甲土地建物(評価額7000万円)、金融資産8000万円がある。

Xの遺言書に「甲土地建物をAに相続させる」と書かれている。

特定の遺産を特定の相続人に相続させる遺言について、判例上、遺産分割方法の指定であるとともに、特段の事情のない限り、遺産分割その他特別の行為を待つまでもなく、相続開始と同時に特定の遺産が特定の相続人に移転するものとされています(最判平成3年4月10日民集45巻4号477頁)。

この「相続させる遺言」により承継される特定の遺産について、特別受益として考慮すべきかが問題となります。前述の判例によると、「相続させる遺言」の場合、対象となった特定の遺産は相続開始と同時に特定の相続人が取得し、遺産分割の対象から外れます。一方で、特定物の遺贈の場合も、相続と同時に目的物の所有権が受遺者に移転し、遺産分割の対象となる相続財産から除外されると考えられていますので、「相続させる遺言」は遺贈と同じような扱いになります。そのため、通説は「相続させる遺言」の場合も特別受益の処理において遺贈と同様に扱うべきであるとしています。

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