相続の基礎知識⑱-相続する財産の範囲Ⅰ-
第1 はじめに
遺言によって遺産分割方法の指定(民法908条前段)や遺贈(民法964条)を行う場合、相続の対象となる財産すべてについて分割方法の指定や遺贈を行っていないと、分割方法が指定されていない財産の帰属を巡って相続人間で争いが生じてしまう危険があります。
そのため、遺言を行う際には、相続の対象となる財産を把握した上で、漏れなく遺産分割方法の指定等を行わなければなりません。
では、どのようなものが相続の対象となるのでしょうか。
第2 相続の対象
相続では、「被相続人の財産に属した一切の権利義務」が相続の対象となります(民法896条)。具体的には、現金や預貯金、土地や建物といった不動産、株式、社債、および国債といった金融商品、貸金や土地建物等の賃借権といった債権、特許権や著作権といった知的財産権等の財産が相続の対象となります。
その一方で、被相続人の借金や損害賠償義務といった債務についても相続の対象となります。
もっとも、個人の人格・才能と密接不可分な関係にある権利義務や個人としての法的地位と密接不可分の関係にある権利義務については、相続の対象となりません(民法896条但書)。このような権利義務のことを法律上は一身専属権というのですが、具体例を挙げてみないとなかなか理解することはできないと思います。
そこで、いくつか例を挙げて見ていくことにしましょう。
まず、個人の人格・才能と密接不可分な関係にある権利義務としては、雇用契約に基づく労働債務、画家の絵画を描く義務、ピアニストのピアノを演奏する義務等があります。
一方、個人としての法的地位と密接不可分の関係にある権利義務としては、子供に対する親権、生活保護受給権、年金受給権等があります。
ただ、相続の対象となる権利義務に該当するかどうかの判断は、なかなか困難ですので、気になる方は弁護士等の専門家に相談されるのがよいと思います。
他方、家系図等の系譜、位牌や仏壇等の祭具、墓石や墓地等の墳墓といった祖先の祭祀のための財産の所有権は、相続の対象にはなりません(民法897条1項)。
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