相続の手引き㊱ 遺留分の基本⑵

 ⑶遺留分、遺留分侵害額の算定方法

相続財産から相続人の自由分(被相続人が自由に処分できる財産)を除いた、遺留分権利者全員が主張できる遺留分の割合を総体的遺留分といわれ、相続人が誰であるかによって割合が定められており、直系尊属のみが相続人の場合は相続財産の3分の1、それ以外の場合には相続財産の2分の1(民法1042条)です。

そして、個別的遺留分は、かかる総体的遺留分に法定相続分の割合を乗じて算定されます。

本件では、Bの個別的遺留分は、8分の1(=1/2(総体的遺留分)×1/4(Bの法定相続分))となります。

遺留分額は遺留分の基礎となる財産に個別的遺留分を乗じたものとなります。

本件では、遺留分の基礎となる財産が8000万円、Bの遺留分額は

1000万円(=8000万円×1/8(Bの個別的遺留分))となります。

⑷遺留分侵害額の算定方法

遺留分侵害額は遺留分額から遺留分権者の受ける特別受益の額及び遺留分権利者が相続によって取得すべき財産の額を控除し、遺留分権利者が負担する相続債務の額を加算することによって算定されます。

本件では、Bの遺留分侵害額は、800万円{=1000万円-300万円+100万円(=400万円×1/4)}となります。

そのため、BはAに対して800万円の支払を請求することができます。

⑸ 遺留分侵害額請求権の消滅

遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったときから1年間行使しないときは時効によって消滅し(民法1048条前段)、相続開始の時から10年の除斥期間を経過したときにも消滅します(同条後段)。

なお、遺留分侵害額請求の意思表示をしたことによって生じる遺留分侵害額に相当する具体的な金銭給付請求権は、遺留分侵害額請求権の行使が令和2年4月1日以降のものについては、債権の消滅時効に関する民法の規律(民法166条1項)に従い、5年の消滅時効にかかることになります。

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