相続法の概要⑥ ー遺贈と死因贈与ー

第1 遺贈

1.概要

遺贈とは、被相続人が遺言によって他人に自己の財産を与えることをいいます(民法第964条)。遺贈の相手方は、相続人であることもあれば、第三者であることもあります。遺贈により相続財産を与えられた者のことを受遺者といいます。

なお、実務上よく用いられる「○○の土地をAに相続させる」旨の遺言や、「すべての遺産をAに相続させる」旨の遺言は、原則として遺贈ではなく遺産分割方法の指定として扱われます(特定財産承継遺言)。

2.特定遺贈と包括遺贈

遺贈には、大きく分けて特定遺贈と包括遺贈があります。

特定遺贈とは、「○○の土地をAに遺贈する」というように、与えるものが特定された遺贈です。特定遺贈では、受遺者に与えられる財産が特定されている上、権利のみが受遺者に与えられます。

包括遺贈とは、「財産の全部をBに包括して遺贈する」、「財産の全部を、C、Dの2名に対し、2分の1ずつの割合で包括して遺贈する」というように、遺産の全部又は一定割合で示された部分の遺産を与える遺贈です。包括遺贈では、被相続人が有していた権利のみならず、義務も含めて受遺者に承継されます。

3.遺贈の放棄

特定遺贈の場合、受遺者はいつでも遺贈を放棄することができます(民法第986条1項)。特定遺贈の放棄は、相続人や遺言執行者に対して意思表示をすることによって行うことができます。

他方、包括遺贈の場合、遺贈を放棄するためには、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に対して申述しなければなりません(民法第990条、第938条、第915条)。

 

第2 死因贈与

死因贈与とは、贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与のことをいいます(民法第554条)。

死因贈与については、特段の事情がない限り、遺贈に関する規定が適用されるので(同条)、遺言と同様、特定の相続人に対し承継させたい相続財産を承継させることが可能となります。

遺言と異なり、厳格な形式が要求されていないため、形式不備により無効となるリスクは低いといえます。他方、遺言と異なり、あくまで贈与であるため、受贈者との間の合意が必要となります。

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