相続法の概要⑧ ー遺産分割Ⅱー

5.特別受益

⑴ 特別受益とは

特別受益とは、被相続人の生前において同人から相続人に対して贈与があった場合のその贈与、及び被相続人から遺贈を受けていた場合のその遺贈をいいます(民法第903条第1項)。具体的には、推定相続人が、被相続人の生前、被相続人から居住用の不動産を買い与えてもらっていた場合や海外留学の費用の援助を受けていた場合などの場合、不動産の価値や海外留学費用が特別受益に該当しうることになります。

⑵ 特別受益の持戻し

特別受益に該当する贈与又は遺贈がある場合、相続人の相続分を算定するに当たっては、被相続人が相続開始時の時において有していた財産の価格に贈与の価格を加えたものが相続財産とみなされることになります(同)。これを、特別受益の持戻しといいます。

例えば、相続財産が2000万円であり、妻、子が2人いる場合を想定すると、法定相続分に従った場合、妻が1000万円、子が500万円ずつ相続することになります。

ところが、妻に対して200万円の遺贈がある場合、次の計算により、妻が900万円、子がそれぞれ550万円ずつ相続することになります。

 妻:(2000万円+200万円)×2分の1-200万円=900万円

 子:(2000万円+200万円)×4分の1=550万円

このように、仮にある相続人に関し特別受益に該当する贈与等がある場合、その他の相続人に係る相続分が増加することになりますので、特別受益の有無及びその額については、相続人間において強く争われることがあります。

不動産の生前贈与など、登記の記載から明らかとすることがある程度容易なものもあります。しかしながら、金銭の生前贈与などの場合には、そもそも贈与の事実自体が強く争われることがあり、その場合には、被相続人に係る預貯金口座の取引履歴や被相続人及び特別受益があるとされる相続人の生活状況等を踏まえた丹念な主張立証が必要となる場合があります。

⑶ 持戻しの免除

被相続人は、特別受益の持戻しの免除をすることができます(民法第903条第3項)。上の例でいいますと、被相続人が妻に対する遺贈について持戻しを免除する旨の意思表示をしていた場合には、贈与がなかった場合と同じように、妻が1000万円、子が500万円ずつ相続することになります。

また、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地を遺贈又は贈与したときは、その遺贈又は贈与について、被相続人は持戻し免除の意思表示をしたものと推定されます(同条第4項)。配偶者居住権の遺贈についても同様です(民法第1028条第3項)。これは、夫婦間における居住用不動産の贈与等は配偶者の老後の生活保障のために行われることが一般的であり、被相続人が、自らの死後に特別受益による持戻し免除すると考えていること通常であるためです。

 

6.寄与分

寄与分とは、相続財産の維持又は増加に特別の寄与した相続人に関し、協議によって定めた金額を当該相続人の相続分とするものです(民法第904条の2第1項)。具体的には、被相続人が経営する事業に対し資金援助を行っていた場合や被相続人に対し特別な貢献と言える程度の療養看護を行っていた場合に、これらを行った相続人には寄与分が認められる場合があります。

協議が整わないときは、家庭裁判所が諸事情を考慮して寄与分を定めます(同第2項)。

寄与分が認められた場合、相続財産の価格から寄与分を控除したものを相続財産とし、寄与分があるとされる者の相続分を算定するときには、その者の相続分に寄与分の額を加算されます。

例えば、相続財産が2000万円であり、相続人に妻、子2人がおり、妻に600万円の寄与分があることが協議ないし審判により定められた場合を想定すると、各人の相続分は次の計算により妻が1300万円、子がそれぞれ350万円となります。

 妻:(2000万円-600万円)×2分の1+600万円=1300万円

 子:(2000万円-600万円)×4分の1=350万円

このように、仮にある相続人に関し寄与分がある場合、各人の相続分が変わることになりますため、寄与分の有無及びその額については、相続人間において強く争われることがあります。

この点、長年被相続人の介護を行ってきたとして寄与分が主張されることがあります。しかしながら、前記のとおり、寄与分は相続財産の維持又は増加に特別の寄与をした相続人に認められるものですので、単に扶養義務を果たしていたことをもって認められるものではなく、それが相続財産の維持又は増加に影響するものでなくてはなりません。

また、寄与分に該当するとなった場合でも、その寄与を評価する基準もないため、寄与分を主張する相続人は、自身が相当と認める金額に関し根拠を示して説得的に主張立証し、他方、他の相続人から寄与分を主張される相続人は、そもそも寄与分に該当しないこと、及び仮に該当するとしても、額が過大であることなどについて根拠を示して主張立証を行っていく必要があります。

このように、前項において述べた特別受益や本項において述べた寄与分が問題となる事案については、争訟に精通した弁護士に依頼することが必要です。

 

7.特別寄与者

特別寄与者とは、相続人ではない親族が被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の相続財産の維持に貢献した場合をいいます。特別寄与者に該当する場合には、「寄与分」に相当する特別寄与料を請求できることとなりました(民法第1050条)。

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