新・相続の基礎知識⑧―遺留分、遺留分侵害額請求―
―目次― 第1 遺留分とは 第2 遺留分が認められる相続人 第3 遺留分の割合 第4 各自の遺留分の額の算出方法 1. ステップ1(基礎となる財産の算定) 2. ステップ2(基礎となる財産に遺留分を乗じる) 3. ステップ3(遺留分侵害額を算出する) 第5 遺留分侵害額請求とは 第6 遺留分侵害額請求権の行使 |
▎▎第1 遺留分とは
遺留分とは、被相続人の財産のうち最低限相続により取得できる割合を意味します(民法1042)。遺留分が定められた趣旨は、近親者である相続人の生活保障など遺産に対する一定の期待を保護することにあります。
▎▎第2 遺留分が認められる相続人
遺留分は、その趣旨に鑑み、相続人全員に認められるものではなく、①配偶者、②子、③親などの直系尊属(ただし、子がいない等の場合にのみ相続人となる)に限って認められています。被相続人の兄弟姉妹には、遺留分は認められていません。
また、相続欠格、廃除、相続放棄により相続権を失った者には、遺留分はありません。
子の代襲相続人は、被代襲者である子と同じ遺留分が認められています。
▎▎第3 遺留分の割合
相続人に認められる遺留分の割合は、以下の表のとおりです。
相続人の範囲 |
遺留分 |
配偶者のみ |
法定相続分の2分の1 |
配偶者と子 |
法定相続分の2分の1ずつ |
配偶者と親などの直系尊属 |
法定相続分の2分の1ずつ |
子のみ |
法定相続分の2分の1 |
親などの直系尊属のみ |
法定相続分の3分の1 |
たとえば、父、母、長男、次男の4人家族のケースで父が他界した場合、父の配偶者である母の法定相続分は2分の1、長男の法定相続分は4分の1、次男の法定相続分は4分の1となります。
そして、各相続人の遺留分は、法定相続分に2分の1を乗じたもの、つまり、母は4分の1、長男、次男は8分の1となります。
その結果、たとえば父が8,000万円の財産(第4のステップ1による計算後の価額だと仮定します。)を遺して他界した場合は、母の遺留分は8,000万円×4分の1=2,000万円、長男、次男の遺留分は8,000万円×8分の1=1,000万円となります。
▎▎第4 各自の遺留分の額の算出方法
遺留分権利者の具体的な遺留分の額は、以下のとおり、遺留分の基礎となる被相続人の財産の額に、遺留分を乗じて算定します。
1. ステップ1(基礎となる財産の算定)
遺留分の基礎となる財産は、①被相続人のプラスの財産に、②被相続人が贈与した価額を加え、③債務の全額を控除することによって算出します。
【基礎となる財産の算定】
基礎となる財産の価額 = ①相続開始時の被相続人の財産(遺贈された財産を含む) + ②被相続人が贈与した財産の価額(ただし、対象となる贈与は以下のとおり限定的) - ③債務の全額
ここで、①相続開始時の被相続人の財産には、遺贈の対象となっている財産も含まれます。
また、②被相続人が、贈与した財産の価額とは、以下のⅠからⅢの場合に限定されます。
Ⅰ.相続人以外の者に対する贈与のうち、相続開始前1年以内に締結した贈与
Ⅱ.遺留分権利者に損害を加えることを知ってなされた贈与
Ⅲ.相続人に対する特別受益に該当する、相続開始前10年以内に行われた贈与
※負担付贈与の場合、Ⅰ及びⅢで参入される価額は、目的財産の価額から負担の価額を控除した額となります(民1045①)。
※不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなします(民1045②)。
※Ⅲは平成30年改正民法により改められたものであるため、施行日である令和元年7月1日以降に相続が生じた場合(同日以降に被相続人が死亡した場合)に適用されます。
そして、③において控除される債務には、金融機関からの借金といった私人間の取引によって生じた債務だけではなく、税金や罰金などの公的な債務も含まれます。ただし、被相続人が保証人として負っている債務(保証債務といいます)は、裁判例上、特段の事情がない限り控除されません(東京高裁平成8年11月7日判時1637号31頁)。
2. ステップ2(基礎となる財産に遺留分を乗じる)
ステップ1で求めた基礎となる財産の価額に、各相続人の遺留分の割合を乗じると、各自の遺留分を算定できます。
たとえば、父、母、子の3人家族で、父の基礎となる財産の価額が6,000万円であった場合、母の遺留分、子の遺留分は共に4分の1となります。そして、父の基礎となる財産の価額である6,000万円に各自の遺留分4分の1を乗じた1,500万円が、母、子の遺留分の額になります。
3. ステップ3(遺留分侵害額を算出する)
ステップ2で求めた遺留分の額が、被相続人の相続において実際に遺留分権利者が取得した財産の価額に遺贈及び特別受益の価額を加えて、負担する債務の価額を控除した額を上回るとき、その差額が遺留分侵害額となります(民1046②)。
たとえば、上記事例において、母が500万円しか受け取っていなかった場合、母の遺留分の額である1500万円と相続により実際に受け取った500万円の差額である、1000万円が遺留分侵害額となります。
▎▎第5 遺留分侵害額請求とは
遺留分の侵害があった場合は、遺留分侵害額請求権という権利が発生します。
遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が、相続開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年、相続開始時から10年経過したとき、時効により消滅します(平成30年改正民法1048)。そのため、具体的な調査等が未了であっても、遺留分を侵害する贈与または遺贈があることを知ったときには、できるだけ早くに権利行使を行う旨を、遺留分を侵害している者(受贈者・受遺者)に意思表示する必要があります。
▎▎第6 遺留分侵害額請求権の行使
遺留分侵害額請求権がある場合、遺留分を侵害した受贈者・受遺者は、贈与又は遺贈を受けた価額の範囲で、遺留分侵害額を負担します(民1047①)。
また、受贈者や受遺者が、金銭以外(不動産・有価証券等)の贈与・遺贈を受けた場合等で、遺留分侵害額請求権の自己負担の価額を直ちに支払うことができない場合、裁判所は、受贈者・受遺者の請求により、負担する債務の全部又は一部の支払について相当の期限を付することができます(民1047⑤)。
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