相続の基礎知識㉚-配偶者居住権Ⅲ-

(4)配偶者居住権の存続期間

 配偶者居住権の存続期間は、原則として配偶者の終身の間です。ただし、遺産分割の協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は遺産分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めによります(民法1030条)。

 居住建物が全部滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合にも、配偶者居住権は消滅します(民法1036条、616条の2)。

(5)配偶者居住権の登記等

 配偶者は、配偶者居住権の登記をすると第三者に対抗することができ、妨害排除請求をすることができます(民法1031条、605条・605条の4)。

(6)配偶者による使用及び収益  

 配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用及び収益をしなければならず、居住建物取得者の承諾を得なければ、居住建物の改築若しくは増築をし、又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることはできません(民法1032条①③)。これらに違反した場合に、相当期間を定めた是正の催告をしたにもかかわらず是正されないときは、居住建物取得者は配偶者居住権を消滅させることができます(同条④)。

 また、配偶者居住権は第三者に譲渡することはできません(同条②)。

 配偶者の居住建物が、配偶者から第三者に賃貸された場合の効果については、転貸の効果(民法613条)が準用されています(民法1036条)。つまり、第三者は、配偶者居住権の範囲を限度として、居住建物所有者に対して賃貸借契約に基づく債務を直接履行する義務を負います(民法613条①)。他方、居住建物所有者は、配偶者に対してもその権利を行使することができます(同条②)。更に、居住建物所有者は、配偶者との間の配偶者居住権を合意により消滅させたことをもって第三者に対抗することはできません。ただし、その当時、居住建物所有者が配偶者の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りではありません(同条③)。

<続く>

相続の基礎知識①-法定相続人とその順位Ⅰ-

相続の基礎知識②-法定相続人とその順位Ⅱ-

相続の基礎知識③-法定相続人とその順位Ⅲ-

相続の基礎知識④-法定相続人とその順位Ⅳ-

相続の基礎知識⑤-法定相続人とその順位Ⅴ-

相続の基礎知識⑥-法定相続人とその順位Ⅵ-

相続の基礎知識⑦-法定相続人とその順位Ⅶ-

相続の基礎知識⑧-相続の承認と放棄Ⅰ-

相続の基礎知識⑨-相続の承認と放棄Ⅱ-

相続の基礎知識⑩-特別受益 相続時の持ち戻しⅠ-

相続の基礎知識⑪-特別受益 相続時の持ち戻しⅡ-

相続の基礎知識⑫-寄与分及び特別寄与料支払請求-

相続の基礎知識⑬-遺留分-

相続の基礎知識⑭-遺留分侵害額請求-

相続の基礎知識⑮-遺言の意義、効力-

相続の基礎知識⑯-遺言の種類-

相続の基礎知識⑰-遺言の変更と撤回-

相続の基礎知識⑱-相続する財産の範囲Ⅰ-

相続の基礎知識⑲-相続する財産の範囲Ⅱ-

相続の基礎知識⑳-遺言執行者の必要性とその役割及び選任方法-

相続の基礎知識㉑-遺産分割方法の指定-

相続の基礎知識㉒-相続分の指定Ⅰ-

相続の基礎知識㉓-相続分の指定Ⅱ-

相続の基礎知識㉔-遺贈Ⅰ 遺贈の意義-

相続の基礎知識㉕-遺贈Ⅱ 遺贈の担保責任-

相続の基礎知識㉖-遺贈Ⅲ 負担付遺贈-

相続の基礎知識㉗-相続人の廃除-

相続の基礎知識㉘-配偶者居住権Ⅰ-

相続の基礎知識㉙-配偶者居住権Ⅱ-

相続の基礎知識㉛-配偶者居住権Ⅳ-

相続の基礎知識㉜-配偶者居住権Ⅴ-

相続の基礎知識㉝-配偶者居住権Ⅵ-

相続の基礎知識㉞-遺産分割に関する見直しⅠ-

相続の基礎知識㉟-遺産分割に関する見直しⅡ-

相続の基礎知識㊱-遺産分割に関する見直しⅢ-

相続の基礎知識㊲-遺産分割に関する見直しⅣ-

相続の基礎知識㊳-遺言制度に関する見直しⅠ-

相続の基礎知識㊴-遺言制度に関する見直しⅡ-

相続の基礎知識㊵-遺言制度に関する見直しⅢ-

相続の基礎知識㊶-遺言制度に関する見直しⅣ-

相続の基礎知識㊷-遺留分制度に関する見直しⅠ-

相続の基礎知識㊸-遺留分制度に関する見直しⅡ-

相続の基礎知識㊹-遺留分制度に関する見直しⅢ-

相続の基礎知識㊺-相続の効力等に関する見直し-

相続の基礎知識㊻-相続人以外の者の貢献を考慮するための方策-

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