相続法の概要⑫ ー配偶者短期居住権ー
1 配偶者短期居住権とは
配偶者短期居住権は、配偶者が相続開始時に被相続人の財産である建物に無償で居住していた場合に、相続開始後も一定期間その建物を無償で居住し続けることができる権利です(民法第1037条第1項)。
配偶者短期居住権は、
① 遺産分割において、配偶者以外の共同相続人が居住建物の所有権を取得し、配偶者居住権が認められなかった場合、
② 居住建物が遺産分割の対象とならない場合及び配偶者が遺産分割の当事者とならない場合
に認められます。
(1) 存続期間
配偶者短期居住権の存続期間は以下の通りです。
居住建物を取得した者は、いつでも配偶者短期居住権の消滅を申し入れることができますが、存続期間内は、配偶者による居住が保護されます(民法第1037条第3項)。
① 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産分割をすべき場合は、遺産分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日
(例)相続開始時1月1日(6か月経過する日=7月1日)、遺産分割成立時5月1日
→7月1まで配偶者短期居住権を取得
② ①以外の場合は(例えば、居住建物が第三者に遺贈された場合、配偶者が相続放棄した場合など)、居住建物の所有者による配偶者短期居住権消滅の申入れ(民法第1037条第3項)の日から6か月を経過する日
(2) 配偶者短期居住権の消滅
配偶者が配偶者居住権を取得したときは、配偶者短期居住権は消滅します(民法第1039条)。また、配偶者の死亡により、配偶者短期居住権は消滅します(民法第1041条・第597条第3項)。また、居住建物が全部滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、配偶者短期居住権は消滅します(民法第1041条・第616条の2)。
2 第三者による居住建物の使用
配偶者は、配偶者居住権と同様に、居住建物取得者の承諾を得ずに、第三者に居住建物を使用させることはできません(民法第1038条第1項、同条第2項)。違反した場合には、居住建物取得者は配偶者短期居住権を消滅させることができます(同条第3項)。
また、配偶者短期居住権は、配偶者居住権と同様に、第三者に譲渡することができません(民法第1032条2項)。
3 居住建物の修繕
配偶者短期居住権が定められている場合であっても、配偶者居住権と同様、配偶者は必要な修繕をすることができます。
4 居住建物の返還等
配偶者は、配偶者短期居住権が消滅したときは、配偶者が配偶者居住権を取得した場合又は居住建物に共有持分を有する場合を除き、居住建物を返還しなければなりません(民法第1040条第1項)。
5 居住建物の費用の負担
配偶者短期居住権が定められている場合であっても、配偶者居住権と同様、配偶者は居住建物の通常の必要費を負担します(民法第1034条第1項)。