相続の手引き⑳ 寄与分の基本その2

⑶ 寄与分の評価の時点

民法904条の2第1項の「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたそのものの寄与分を控除したものを相続財産とみなし」との文言から相続開始時と解され、寄与分は相続開始時を基準としてこれを考慮すべきとする裁判例もあります(東京高決昭和57年3月16日家月35巻7号55頁)。

⑷ 寄与分が認められる範囲

遺贈の範囲には寄与分は及びません(民法904条の2第3項)。また、遺留分を上回る寄与分を定めることはできません(東京高決平成3年12月24日判タ794号215頁)。

⑸ 寄与分の定め方

寄与分は共同相続人間の協議(民法904条の2第1項)によって、又は協議によって解決できない場合には寄与者の請求に基づき家庭裁判所が定めることとされています(同条第2項)。

寄与分を定める調停を申し立てる場合の管轄裁判所は、相手方の住所地の家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所(家事事件手続法245条1項)ですが、遺産分割調停事件が既に家庭裁判所に係属している場合にはその裁判所に申し立てる必要があります(家事事件手続法245条3項・191条2項)。

寄与分を定める調停ではなく、寄与分を定める審判を申し立てることができるのは、遺産分割の審判がされている場合及び死後認知を受けた相続人の価格支払請求[1]があった場合に限定されています。

⑹ 具体的相続分による遺産分割の制限

民法904条の3により、相続開始から10年を経過後の遺産分割においては原則として寄与分の主張をすることができません。もっとも、相続人全員の合意がある場合の他、相続開始から10年が経過する前に相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求をした場合(民法904条の3第1号)や同条第2号が定める要件を満たす場合には、相続開始から10年を経過した遺産分割において寄与分の主張をすることが可能です。



死後認知によって死亡した者の子どもと認められ相続人となった者は、死後認知の前に遺産分割手続きが終了している場合には、遺産分割のやり直しではなく、金銭の支払いを求めることができます(民法910条)。

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