相続の手引き㉜ 相続分の譲渡⑶

⑸ 第三者に対して相続分の譲渡を行った場合

【事例】

被相続人には、相続人が配偶者Aと子2人(B,C)がいた場合において、Bが遺産分割前に第三者Dに対して、自己の相続分の全部を譲渡した場合、相続分はどのようになるでしょうか。また、AとCは、遺産分割手続にあたってDを参加させる必要があるのでしょうか。

相続人が第三者に対して相続分の譲渡をした場合であっても、譲渡相続人以外の法定相続人の相続分には何ら影響がありません。

そのため、本件において、BがDに相続分を譲渡した場合の相続分はAが2分の1、Bが0、Cが4分の1、Dが4分の1となります。

そして、相続分譲受人は、相続分譲渡人から相続分を譲り受けたことによって、遺産分割手続きに参加する権利を当然に取得することになるため、相続分譲受人を遺産分割手続に参加させるべきことは当然であると解されています。

そのため、本件において、AとCは遺産分割手続きにDを参加させる必要があります。

もっとも、AとCは、相続分の取戻権(民法905条)を行使し、Bの相続分に対する価額と費用を第三者Dに償還し、その相続分を譲り受けることによって遺産分割手続きにDが関与することを排除することができます。

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