相続の手引き⑲ 寄与分の基本その1
1 寄与分の基本
寄与分とは、共同相続人中に、被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与をした者がある場合に、遺産分割に際し、本来の相続分を超える額の財産を取得させる制度です。
⑴ 寄与分が認められる者の範囲
寄与分は、相続人である者にだけ認められるものであって、相続人でない者(例えば、内縁の妻)には、寄与分は認められません。
なお、被相続人の親族であるが相続人でない者(例えば、被相続人の子の配偶者)が財産の維持または増加につき特別な寄与をした場合、特別寄与者として相続人に対して特別寄与料の支払を請求することができます(民法1050条)。
また、寄与分も特別寄与料も認められない者(例えば、内縁の妻、事実上の養子)は、相続人がいない場合に限って特別縁故者として財産の分与を受けることが可能です(民法958条の2第1項)。
⑵ 寄与行為の類型
寄与分が認められる要件としては、①寄与行為が特別の寄与、すなわち被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を超える特別の貢献があったと評価できること②被相続人の財産が維持又は増加したこと③寄与行為と財産の維持又は増加との因果関係があることです。
そして、寄与行為に特別の寄与が認められる場合として、実務上以下のとおり類型化されています。
ア 家事従事型
例:被相続人が行っていた個人事業に長期間、無償またはそれと同視できる程低い給料で従事していた場合
イ 金銭等出資型
例:被相続人に対して開業資金や事業のために不動産を提供した場合
ウ 療養看護型
例:老齢の被相続人を介護していた場合
エ 扶養型
例:生活費の援助をした場合
オ 財産管理型
例:被相続人所有の賃貸不動産を無報酬で管理した場合
(続く)