相続法の概要② ー相続における一般的な手続の流れⅠー

 被相続人が死亡した場合には、相続が開始します(民法第882条)。

 相続が開始した場合においては、ただちに次の手続を行い、又は行う必要があるか否かを検討する必要があります。

1.死亡届の提出

 戸籍法第86条では、死亡の届出は、死亡の事実を知った日から7日以内に行うべき旨定めています。

 また、上記届出については、①同居の親族、②その他の同居者、③家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人の順に届出義務があると定められています(同法第87条第1項)

 したがいまして、これらに該当する者は、被相続人の死亡を知った時から7日以内に死亡届を提出する必要があります。

2.預貯金に係る取引の停止

 金融機関は、名義人の死亡を関係者から連絡されない限り、基本的には死亡の事実を知る機会がありません。

 そして、被相続人が死亡した場合、被相続人名義の預貯金については相続財産となります(最高裁平成28年12月19日決定・民集70巻8号2121頁)。

 そのため、相続人の一人が被相続人の死亡後引き出すことによって預貯金が逸失してしまうのを防止するため、被相続人が死亡した場合には、すぐに金融機関に連絡する必要があります。

 他方、金融機関に連絡した場合、被相続人の預貯金に関し、引き出し等の取引が一切行えないことになるため、医療機関に対する治療費の支払いや葬儀費用の支払い資金の捻出に困ることがあります。

 この場合には、次の方法を執ることが考えられます。

 まず、金融機関に連絡する前に、まとまった預貯金を引き出しておくことが考えられます。なお、後に相続人間で紛争が生じるのを防ぐために、預貯金を引き出す前にあらかじめ相続人全員の承諾を得ておくことが望ましいです。

 また、相続人全員から承諾を得られない場合や既に口座が凍結されてしまった場合には、遺産分割前の預貯金の払戻し制度を利用することが考えられます(民法第909条の2)

 遺産分割前の預貯金の払戻し制度を利用することで、各相続人は、相続財産に属する預貯金債権の3分の1に対し各自の法定相続分を乗じた金額について、150万円を限度に単独で権利を行使することができます。

3.生命保険の受取

 被相続人が生命保険契約を締結していた場合、受取人として相続人が指定されている場合があります。

 そして、受取人として相続人が指定されている場合における生命保険契約に基づく保険金請求権は、原則として、相続人の固有財産と解されており、相続財産に含まれるものではないと解されております(最高裁昭和40年2月2日・民集19巻1号1頁)。

 そのため、受取人として指定されている相続人は、遺産分割協議の成立を待つまでもなく、被相続人の死亡後ただちに生命保険金を受け取ることができます。

 したがいまして、被相続人が死亡した場合には、被相続人が生前生命保険契約を締結していたか否かを確認し、締結していることが確認された場合には、当該契約に係る保険証券を確認し、受取人として誰が指定されているかを確認のうえ、生命保険金の受取申請の手続を行う必要があります。

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