「会社内部紛争を防止するための非上場会社の株主管理・株主対策」所在不明株主1-所在不明株主の問題
【目次】 ➡1 所在不明株主の問題 2 所在不明株主の株式売却許可申立制度 3 経営承継円滑化法の特例 4 その他の方法(スクイーズ・アウトの手法) |
所在不明株主の存在は、会社の業務や経営においてさまざまな問題を引き起こします。会社が株主に対して通知や催告を行う際、所在不明株主に対しても手続きが必要となり、無用な手間や費用がかかります。法律上、通知・催告を省略できる要件が定められているものの(会社法196条1項)、実務的には未払配当金の管理や経理処理においてコストと煩雑さが増大します。
また、所在不明株主が株主総会に出席できないことで、総会の定足数や決議要件を満たせず、会社運営に支障が生じる可能性があります。特に、全株主の同意が必要な重要事項の決議が行えない場合、会社の運営や意思決定に深刻な影響を及ぼします。
さらに、所在不明株主の存在は、M&Aや事業承継にも大きな障害となります。M&Aにおいては、買い手が発行済株式の全てを取得できない場合、取引価値の低下や取引の中止に繋がるリスクがあります。また、事業承継では、後継者に株式を集中させることが重要であるものの、所在不明株主から株式を任意で取得することが事実上不可能であり、その株式を強制的に取得する方法が問題となります。特に中小企業においては、株主数が少なく、各株主の議決権割合が高い場合が多いため、所在不明株主の影響は一層深刻です。
このように、所在不明株主は会社の業務運営や戦略的な意思決定において、コストやリスクを増大させる要因となるため、早期の対策が求められます。
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「会社内部紛争を防止するための非上場会社の株主管理・株主対策」所在不明株主2-所在不明株主の株式売却許可申立制度①
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