株主総会開催の勧め

「株主総会開催の勧め」という表題をご覧になって、大企業で働いていらっしゃる方や会社法を学ばれたことのある方は、決算毎に定時株主総会を開催することは当たり前なのにおかしなことをいうものだ、と思われるかも知れません。

しかし、我が国の中小企業の多くは、株主総会を開催していません。設立以来一度も開催していないという会社も珍しくはありません。役員の選任や定款の変更といった登記事項については、株主総会を開催していないにもかかわらず、登記に必要となる株主総会議事録を作成して法務局に提出するのです。

このような会社法に違反する事態が常態化していたとしても、会社オーナーが100%株式を有していたり、資産管理会社・親族などオーナーの影響力下の者も含めて100%の株式を有している場合には、株主総会を開催していなかったとしても問題は顕在化しません。

しかし、僅かな保有株式数であっても反対派の株主が存在する場合には、大きな問題が生じるおそれがあります。株主総会を開催していない場合には、反対派株主から株主総会決議不存在確認請求という訴訟を起こされるリスクがあるのです。この訴訟を提起されれば、会社側はほぼ敗訴し、株主総会で決議したことになっている役員選任決議などが存在しなかったこととされてしまうのです。そうすると、選任決議が不存在である役員が行った行為の効力や、その後の株主総会決議の効力にまで影響を及ぼしてしまうのです。

このように、株主総会を開催していないことは、反対派株主に大きな武器を与えることになるのであって、会社内部の紛争を産む端緒ともなり得ます。

株主総会については、慣れてしまえばその招集手続も当日の運営・進行についてもそれほど負担がかかるものではありません(もちろん反対派株主対策は慎重に検討・実施する必要があります。)。

現時点では、株主総会を開催していなくても何も問題が生じていないとしても、オーナーの死去による相続の発生や経営方針の違いによる経営陣の対立、また近時増加している非上場株式を換価したいと考える少数株主による攻勢に備えるために、平時から株主総会を開催されることを強くお勧め致します。

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