「非上場会社のための株主管理・株主対策Q&A」株券③

【Q1】株券とはどのようなものですか。

【Q2】株券には、どのような事項を記載する必要がありますか。

➡【Q3】株券発行会社と株券不発行会社では、株式の取扱いにどのような違いがありますか。

【Q4】株券発行会社では、株券の発行・紛失やM&A・事業承継に際して、どのような点に注意すべきですか。

【Q5】株券発行会社は、株券不発行会社へ移行した方がよいのでしょうか。

【Q3】株券発行会社と株券不発行会社では、株式の取扱いにどのような違いがありますか。

【A】 株券発行会社では株券の存在を前提とした制度が設けられているため、株券不発行会社とは、株式の譲渡方法や権利の取得、株券提出手続などに違いがあります。主な相違点は、①株式の譲渡・質入れ等の方法(会社法128条、146条)と対抗要件(会社法130条、147条)、②株券の善意取得(会社法131条)、③株券提出手続(会社法219条)です。

(解説)

1 株式の譲渡等の方法

(1)原則ルール

株券不発行会社では、株式の譲渡等は当事者間の合意によって成立します。一方、株券発行会社では、自己株式の処分を除き、株券を交付しなければ、原則として株式の譲渡等の効力は生じません(会社法128条1項、会社法146条2項)。

もっとも、株券がまだ発行されていない段階では、当事者間では株券の交付がなくても譲渡が成立し得る一方、会社との関係では株式譲渡の効力は生じません(会社法128条2項)。この場合でも、譲受人は譲渡人に代わって会社に対する株券発行請求権を行使し、会社に対して株券の交付を直接譲受人に対してすることを求めることができます(最判令和6年4月19日民集78巻2号267頁)。

(2)例外ルール

会社が不当に株券発行を遅滞している場合や、会社が株券を発行しないまま意思表示のみによる株式譲渡を認めて株主名簿の名義書換をした場合には、信義則上、会社が株券発行前であることを理由に譲渡の効力を否定できないことがあります(最大判昭和47年11月8日民集26巻9号1489頁)。

信義則上会社が株式発行前であることを理由に譲渡の効力を否定できない具体的なケースとしては、譲渡の効力を否定すると譲渡当時に株券発行権限を有していた会社代表者が不当に利益を得る場合や、会社の要請により株券を発行しないまま当事者間で譲渡を行った場合などが考えられます。

(3)対抗要件

株券不発行会社では、株式の譲受人が会社だけでなく第三者に対しても株主であることを主張するには、株主名簿の名義書換が必要です。これに対し、株券発行会社では、株主名簿の名義書換が必要となるのは、原則として会社との関係に限られます(会社法130条)。

2 善意取得制度

株券発行会社では、株券の占有者は、その株券に係る株式の権利者であると推定されます(会社法131条1項)。そのため、株券を交付した者が真の株主でなくても、取得者が善意・無重過失であれば、当該株券に表章された権利を取得できる場合があります(会社法131条2項)。

これに対し、株券不発行会社には、このような株券を前提とした善意取得制度はありません。

3 株券提出手続

株券発行会社が、株券を無効となる一定の手続を行う場合には、原則として株券提出手続が必要です(会社法219条)。

全部の株式を譲渡制限株式とする定款変更、株式の併合、全部取得条項付種類株式の取得、取得条項付株式の取得、特別支配株主による株式等売渡請求の承認、組織変更、消滅会社における合併、株式交換、株式移転といった会社法219条1項各号に掲げる手続を行う場合、会社は、効力発生日の1か月前までに株券の提出を求める公告を行い、株主等にも個別に通知しなければなりません。ただし、対象となるすべての株式について株券を発行していない場合は、株券提出手続は不要です(会社法219条1項ただし書)。

この手続は、株主や株式の権利関係を確定させる重要な意味を持つため、手続上の不備が行為の差止めや無効の原因となる可能性があります。

なお、株券不発行会社では、そもそも株券を提出させる必要がないため、株券提出手続は不要です。また、株券発行会社の株主が取得請求権付株式の取得を請求する場合や、株式買取請求権を行使する場合には、株主でなくなることに伴い、株券を会社に提出する必要があります(会社法116条6項、会社法166条3項、会社法182条の4第5項、会社法469条6項、会社法785条6項、会社法797条6項、会社法806条6項)。

加藤&パートナーズ法律事務所(大阪市北区西天満)では、関西を中心に会社法、会社内部紛争、事業承継、株主対策に関するご相談・ご依頼をお受けしております。

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