「非上場会社のための株主管理・株主対策Q&A」競業取引・利益相反取引・利益供与③
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➡Q1 取締役が競業取引を行う場合、少数株主との紛争や責任追及を避けるために、どのような手続と注意を要しますか。 ➡Q2 取締役が利益相反取引を行う場合、少数株主との紛争や責任追及を避けるために、どのような手続と注意を要しますか。 ➡Q3 株主への利益供与とは何を指し、少数株主との対立がある会社ではどのようなリスクに注意すべきですか。 |
【Q3】株主への利益供与とは何を指し、少数株主との対立がある会社ではどのようなリスクに注意すべきですか。
【A】株主への利益供与とは会社が株主の権利行使に影響を与える目的で財産上の利益を与えることを指し、会社法120条で原則禁止されています。違反すると取締役は民事・刑事の責任を負うおそれがあります。
(解説)
1 利益供与と少数株主対策
会社法は、株式会社は、何人に対しても、株主の権利行使に関し、財産上の利益の供与をしてはならない旨規定し、株主の権利行使に関連する利益供与を禁止しています(会社法120条1項)。
この規制は総会屋対策として導入されたものですが、適用対象は総会屋に限られません。株主の議決権行使や訴訟提起など、株主としての権利行使に関係するものであれば広く問題となります。
例えば、経営権維持のために協力的な株主へ経済的利益を与えたり、対立株主との紛争解決のために会社資金を用いて利益を供与したりする場合には、利益供与規制に抵触する可能性があります。
利益供与に関与した取締役は、利益相当額の支払責任を負うほか(会社法120条4項)、株主代表訴訟の対象となり得ます(会社法847条1項)。さらに、取締役解任の理由となる場合や、刑事責任(会社法970条1項)が問題となる場合もあります。
2 利益供与の禁止
(1)主体
規制対象となるのは、実質的に会社または子会社の負担で行われる利益供与です。
名義上は取締役個人や従業員が提供していても、最終的に会社が費用を負担するのであれば、会社による利益供与と評価される可能性があります。
(2)相手方
条文は「何人に対しても」と定めており、供与先に限定はありません。
株主本人だけでなく、第三者に対する利益供与であっても、株主の権利行使に関係するものであれば問題となり得ます。
(3)財産上の利益の供与
利益供与の対象は現金や物品に限られません。
債権、知的財産権、電気・ガス等の供給、債務免除、時効完成の放置による債務消滅なども含まれます。また、有償取引であっても内容次第では利益供与と評価されることがあります。
さらに、利益を生み出す地位や独占的な取引機会、有益な情報の提供なども財産上の利益に含まれると考えられています。
(4)株主の権利行使に関し
対象となる株主の権利には、議決権、質問権、株主提案権、株主代表訴訟提起権などが含まれます。
利益供与は、権利行使を促進する場合だけでなく、行使を控えさせる目的の場合も該当します。
判例上も、会社にとって好ましくない株主の議決権行使を回避する目的で第三者に資金提供した事案について、利益供与に該当すると判断されています(蛇の目ミシン事件・最判平成18年4月10日)。
なお、供与者には株主の権利行使へ影響を与える認識が必要とされますが、供与者と受領者との意思の一致までは必要とされていません。
3 関連性の推定
利益供与が「株主の権利行使に関し」行われたことの立証は容易ではありません。
そこで会社法は、特定の株主に対して無償又は著しく低い対価で利益が与えられた場合には、権利行使との関連性を推定する制度を設けています(会社法120条2項)。
4 被供与者の利益返還義務
利益を受けた者は、その者が事情を知っていたかどうかにかかわらず、会社へ利益を返還しなければなりません(会社法120条3項)。
また、会社が返還請求を行わない場合には、株主が株主代表訴訟により返還を求めることも可能です(会社法847条1項)。
5 取締役の責任
(1)民事責任
利益供与に関与した取締役は、会社に対して連帯して利益相当額を支払う責任を負います(会社法120条4項)。
対象となるのは、利益供与を実行した取締役のほか、取締役会や株主総会において利益供与議案の提案や賛成に関与した取締役等です(会社法施行規則21条)。
実際に利益供与を行った取締役については無過失責任が課されます。他方、それ以外の取締役は、自らに過失がなかったことを立証できれば責任を免れる余地があります(会社法120条4項但書)。
さらに、利益供与は任務懈怠責任(会社法423条1項)の問題にもなり、監督義務を怠った他の取締役にも責任が及ぶ可能性があります。
加えて、取締役解任の正当事由(会社法339条2項)や解任訴訟(会社法854条)の理由となることもあります。
(2)刑事責任
利益供与については刑事罰も設けられています。
会社法970条1項・5項は、関与した取締役等に対し、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(併科あり)を定めています。
このように、利益供与は会社・取締役双方に重大な法的リスクをもたらすため、少数株主対策として会社資金を利用することは極めて慎重に検討すべきです。そのため、少数株主対策については専門家の助言、支援を求めるべきです。
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