「非上場会社のための株主管理・株主対策Q&A」会社法を遵守した株主総会④
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➡【Q1】株主総会を開催せず、議事録だけを作成している会社にはどのようなリスクがありますか。 ➡【Q2】株主総会にはどのような種類や決議方法があり、取締役会設置会社と非設置会社では役割にどのような違いがありますか。 ➡【Q3】株主総会の招集手続に不備があると、どのような法的リスクが生じますか。 ➡【Q4】株主総会の運営に不備があった場合、どのようなリスクが生じ、どの点に注意すべきですか。 ➡【Q5】株主総会を省略・簡略化する特殊な手続にはどのようなものがあり、利用時の注意点は何ですか。 ➡【Q6】過去の株主総会に瑕疵がある場合、どのような方法でその不備を是正できますか。 |
【Q4】株主総会の運営に不備があった場合、どのようなリスクが生じ、どの点に注意すべきですか。
【A】運営に違法があると「決議方法の法令違反」(会社法831条1項1号)として決議取消の対象となり、採決自体が不明確な場合は会社法830条により決議不存在とされるおそれがあります。
(解説)
1 株主総会の運営に不備がある場合のリスク
株主総会は、招集手続が適法であっても、その当日の運営に問題があれば決議の効力が否定される可能性があります。具体的には、議事進行や採決方法に違法がある場合、決議方法の法令違反(会社法831条1項1号)として取消事由となります。
さらに、採決が行われていない、または賛否の状況が全く把握できない場合には、そもそも決議が存在しないとして決議不存在(会社法830条)と評価されるリスクもあります。
これを防ぐためには、事前に進行表や想定問答を準備し、議決権の集計方法や委任状の扱いなどを整理しておくことが重要です。紛争が予想される場合には、録音・録画や株主総会検査役(会社法306条)の活用も検討されます。
2 株主総会の当日運営(一括審議方式)の一般的な流れ
一般的な進行は、受付から始まり、開会、定足数確認、報告事項の説明、議案の上程、質疑応答、採決、閉会という順序で進みます。
対立株主がいる場合には、議案ごとに審議するのではなく、すべてをまとめて審議する「一括審議方式」を採用することで、質疑の長期化を防ぎ、円滑な進行を図ることができます。
3 典型的な株主総会の運営方法の違反
(1)委任状提出者の扱いの誤り
代理人による議決権行使には、原則として書面による証明が必要です(会社法310条1項)。委任状の内容確認や代理人資格の判断を誤ると、議決権の取扱いに影響が生じるので注意が必要です。
(2)議長の議事運営の不備
議長は総会の秩序維持と円滑な進行を担い、必要に応じて退場命令も可能です(会社法315条1項・2項)。
もっとも、合理性を欠く質疑打切りや不当な退場措置は、取消事由となる可能性があります(会社法831条1項1号)。
(3)動議の処理に関する不備
株主は議案の修正動議を提出できます(会社法304条)。
また、総会の延期や議長不信任などの手続的動議については、議場で適切に採決を行う必要があります(会社法317条)。これらを無視すると手続違反となるおそれがあります。
(4)株主からの質問への対応の不備と説明義務違反
株主からの質問に対しては、取締役等に説明義務が課されています(会社法314条)。この義務に違反した場合、決議方法の違法として取消事由となり得ます(会社法831条1項1号)。
ただし、説明義務は無制限ではなく、議題と無関係な事項や、会社や第三者の利益を害する場合などは回答不要とされています(会社法314条ただし書、会社法施行規則71条)。
また、事前質問状の送付があった場合には、調査を理由とする回答拒否が原則許されない点にも注意が必要です。
(5)採決の方法の不備
採決方法自体に法定の形式はなく、定款に定めがない限り、拍手、挙手、投票用紙による投票等、議長の裁量に委ねられていますが、議決権の集計ミスや決議要件の誤認は重大な問題となります。
誤った結果に基づき可決宣言を行った場合、決議の効力が争われ、取消または不存在と判断される可能性があります。
加藤&パートナーズ法律事務所(大阪市北区西天満)では、関西を中心に会社法、会社内部紛争、事業承継、株主対策に関するご相談・ご依頼をお受けしております。
