「非上場会社のための株主管理・株主対策Q&A」コンプライアンス経営の重要性②
|
➡【Q1】なぜ少数株主対策としてコンプライアンス経営が重要なのですか。 ➡【Q2】株主総会を適正に開催しない場合、どのようなリスクがありますか。 ➡【Q3】株主総会決議に関する訴訟には主にどのようなものがありますか。 ➡【Q4】法令違反は、なぜ株主代表訴訟のリスクを高めるのですか。 ➡【Q5】取締役等の役員は、株主に対しても損害賠償責任を負うことがありますか。 ➡【Q6】法令違反をすると、経営陣にはどのような刑事・行政上のリスクがありますか。 ➡【Q7】自社のコンプライアンス経営の程度を確認するにはどのようなチェックを行えばよいでしょうか。 |
【Q4】法令違反は、なぜ株主代表訴訟のリスクを高めるのですか。
【A】法令や会社法手続の違反は、取締役の任務懈怠として責任追及につながります。「形式的な違反」であっても株主代表訴訟のリスクとなるため、法令遵守の徹底が重要です。
(解説)株主代表訴訟とは、会社に損害を与えた取締役等の責任を追及するため、株主が会社に代わって損害賠償請求を行う制度です(会社法847条)。賠償金は株主個人ではなく会社に帰属しますが、少数株主が経営陣の行為を是正するための強力な手段となります。
取締役等が負う「任務懈怠」とは、本来果たすべき職務を適切に遂行しなかったことを指し、会社法に限らず、刑事法、労働法、消費者法、業法など、企業活動に関わる法令全般への違反も含まれます。これらに反する業務執行によって会社に損害が生じた場合、取締役は責任を問われる可能性があります(会社法423条1項)。
また、特別背任罪(会社法960条1項)、競業取引違反(会社法356条1項1号)や利益相反取引違反(同項2号3号)など、会社法上の具体的規制に反する行為も任務懈怠に該当します。中小企業では、会社財産の私的流用や、関係会社への不利益な取引など、会社と個人の区別が曖昧な経営が問題となることも少なくありません。これらの行為は、民事責任にとどまらず、刑事責任が問われる場合もあります。
さらに、取締役会設置会社では、重要な資産取引や多額の借入れは取締役会決議を要します(会社法362条4項)。経営判断そのものは一定程度保護されますが、必要な決議手続を欠いていれば法令違反となり、経営陣の責任が認められるリスクが大きく高まります。
このように、法令遵守を欠いた経営は、株主代表訴訟につながりやすく、とりわけ会社法に関する基本的な理解不足による「軽微な違反」が重大な紛争に発展する点には注意が必要です。
【Q5】取締役等の役員は、株主に対しても損害賠償責任を負うことがありますか。
【A】会社法では、取締役等が悪意または重過失により第三者に損害を与えた場合、賠償責任を負うとされています。
(解説)会社法は、取締役等が職務遂行において重大な過失や故意により他者へ損害を与えた場合、その損害を賠償すべき責任を負うと定めています(会社法429条1項)。この「他者」に株主が含まれるかについては議論があるものの、取締役と支配株主が実質的に一体となっている閉鎖的な中小企業では、株主からの賠償請求を認める見解が有力です。実際の裁判例でも、違法な株式発行や利益相反行為を理由に、株主の請求を認容した例があります。このような責任追及を避けるためにも、日常的な法令遵守体制の整備が不可欠です。
【Q6】法令違反をすると、経営陣にはどのような刑事・行政上のリスクがありますか。
【A】法令違反の内容によっては、特別背任罪などの刑事責任や、営業停止等の行政処分を受ける可能性があります。
(解説)法令違反の内容によっては、経営陣が特別背任罪(会社法960条1項)などの刑事責任を問われる場合があります。とくに株主との関係が悪化していると、違反行為を把握した株主による刑事告発や、その示唆が交渉材料として用いられるおそれがあります。
また、業法違反などにより営業停止等の行政処分を受ければ、企業価値は大きく損なわれますが、配当も期待できない会社では、株主の反感がそれを上回り、抑止力として機能しないこともあります。
こうしたリスクを避けるためにも、日常的なコンプライアンスの徹底が重要です。
<続く>
「非上場会社のための株主管理・株主対策Q&A」コンプライアンス経営の重要性①
加藤&パートナーズ法律事務所(大阪市北区西天満)では、関西を中心に会社法、会社内部紛争、事業承継、株主対策に関するご相談・ご依頼をお受けしております。
