「非上場会社のための株主管理・株主対策Q&A」コンプライアンス経営の重要性①

➡【Q1】なぜ少数株主対策としてコンプライアンス経営が重要なのですか。

➡【Q2】株主総会を適正に開催しない場合、どのようなリスクがありますか。

➡【Q3】株主総会決議に関する訴訟には主にどのようなものがありますか。

【Q4】法令違反は、なぜ株主代表訴訟のリスクを高めるのですか。

【Q5】取締役等の役員は、株主に対しても損害賠償責任を負うことがありますか。

【Q6】法令違反をすると、経営陣にはどのような刑事・行政上のリスクがありますか。

【Q7】自社のコンプライアンス経営の程度を確認するにはどのようなチェックを行えばよいでしょうか。

【Q1】なぜ少数株主対策としてコンプライアンス経営が重要なのですか。

A】法令違反は少数株主にとって格好の攻撃材料となり、内部紛争や企業価値低下を招きます。平時からのコンプライアンス経営が、紛争防止と企業価値向上の鍵となります。

(解説)支配株主が議決権を完全に保有していない場合、相続や経営方針の相違、少数株主による株式換価の意向などをきっかけとして、会社法上認められた権利行使が顕在化する可能性があります。これが支配株主と少数株主との対立に発展すると、紛争対応に経営資源が割かれ、結果として企業価値の低下を招きかねません。

こうしたリスクを抑えるためには、平時から会社法をはじめとする法令を遵守し、少数株主に不当性を指摘されない経営体制を整えておくことが重要です。コンプライアンスの徹底には一定のコストを要しますが、紛争の予防や損失回避という観点からは合理的な投資であり、将来的にM&Aによる売却を検討する場面では、企業価値や評価額の向上にも寄与します。



【Q2】株主総会を適正に開催しない場合、どのようなリスクがありますか。

【A】株主総会の手続違反は、決議の効力を争われ、経営に混乱をもたらします。会社法に従った適正な株主総会運営が不可欠です。

(解説)株主総会は、株主が会社の基本方針を決定する意思決定機関であり、取締役会を設置しない会社では特に大きな権限を有します(会社法295条1項)。取締役会設置会社であっても、役員の選解任、計算書類の承認、配当、定款変更、新株発行や組織再編など、経営の根幹に関わる事項は株主総会で決議されます(会社法295条2項、329条1項、438条2項、199条2項、454条1項、466条、309条2項3項4項等)。

一方で、中小企業では、形式的に議事録のみを作成し、実際には株主総会を開催していない、または法定手続を十分に踏んでいないケースが少なくありません。特に、相続により株主構成が変化した後も従来どおりの運営を続けている場合、問題が顕在化しやすくなります。支配株主が全株式を保有していれば実害は生じにくいものの、少数株主が存在する状況で手続を欠くと、株主総会決議を巡る法的紛争を招くおそれがあります。


【Q3】株主総会決議に関する訴訟には主にどのようなものがありますか。

【A】株主は、株主総会決議について、大きく分けて三つの訴訟を提起することができます。

①株主総会決議不存在確認の訴え

②株主総会決議無効確認の訴え

③株主総会決議取消しの訴え

(解説)①1つめに、株主総会が実質的に成立していない場合に、その決議自体が存在しないことの確認を求める訴え(株主総会決議不存在確認の訴え・会社法830条1項)があります。実際には総会を開いていないのに議事録だけを作成した場合や、招集手続に重大な欠陥があり、決議があったとは評価できない場合などが典型例です。

②2つめに、決議内容が会社法などの法令に反する場合には、その効力が無効であることの確認を求める訴え(株主総会決議無効確認の訴え・会社法830条2項)が認められます。違法な配当や自己株式取得に関する決議(会社法156条1項)などがこれに当たります。

③3つめに、株主総会の招集手続や決議方法が法令・定款に違反している場合や、特別の利害関係を有する者の議決権行使によって不当な決議がなされた場合には、決議の取消を求めることができます(株主総会決議取消しの訴え・会社法831条1項)。この訴えは、原則として決議日から3か月以内に提起する必要があります。

実務では、一部株主への招集通知漏れ、通知内容の不備、取締役の説明義務違反などが問題となることが少なくありません。これらの訴えにより決議の効力が否定されると、当該決議に基づく経営判断が覆され、さらに後続の決議にも影響が及ぶことで、経営の混乱や対応コストの増大を招くおそれがあります。

このようなリスクを避けるためにも、会社法に則った適正な株主総会運営が、コンプライアンス経営の前提となります。



加藤&パートナーズ法律事務所(大阪市北区西天満)では、関西を中心に会社法、会社内部紛争、事業承継、株主対策に関するご相談・ご依頼をお受けしております。

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