「非上場会社のための株主管理・株主対策Q&A」会社法を遵守した株主総会③
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➡【Q1】株主総会を開催せず、議事録だけを作成している会社にはどのようなリスクがありますか。 ➡【Q2】株主総会にはどのような種類や決議方法があり、取締役会設置会社と非設置会社では役割にどのような違いがありますか。 ➡【Q3】株主総会の招集手続に不備があると、どのような法的リスクが生じますか。 ➡【Q4】株主総会の運営に不備があった場合、どのようなリスクが生じ、どの点に注意すべきですか。 ➡【Q5】株主総会を省略・簡略化する特殊な手続にはどのようなものがあり、利用時の注意点は何ですか。 ➡【Q6】過去の株主総会に瑕疵がある場合、どのような方法でその不備を是正できますか。 |
【Q3】株主総会の招集手続に不備があると、どのような法的リスクが生じますか。
【A】招集手続に違反があると「株主総会決議取消訴訟」(会社法831条)により決議が取り消され、重大な場合は「株主総会決議不存在確認請求訴訟」(会社法830条1項)により決議自体が無効と判断されるおそれがあります。
(解説)
1 招集手続が遵守されていない場合のリスク
株主総会を実施していても、法定の招集手続に違反がある場合には、その決議は取消事由となり(会社法831条1項)、株主総会決議取消訴訟により無効とされる可能性があります。さらに、違反の程度が重大であれば、決議自体が存在しないと法的に評価されることもあり(会社法830条1項)、その影響はより深刻です。
取消訴訟は決議日から3か月以内の提訴が必要ですが(会社法831条1項)、不存在確認訴訟には期間制限がなく、過去の決議にも影響が及び得ます。
決議が否定されると、役員の地位や報酬の根拠が失われるほか、自己株式取得やスクイーズ・アウト、種類株式の導入などの行為にも無効のリスクが生じます。
2 典型的な招集手続違反
中小企業で見られる主な不備を整理しますが、適法性の判断は会社の機関設計や株主構成等も踏まえて行う必要があります。
(1)株主総会招集に関する取締役会決議の欠如
取締役会設置会社では、株主総会の招集事項は取締役会で決定する必要があります(会社法298条4項・1項各号)。
決定事項には、①日時・場所、②目的事項、③書面投票の可否(会社法311条)、④電子投票の可否(会社法312条)、⑤その他法務省令事項(会社法施行規則63条)が含まれます。これらは招集通知の記載事項にもなります(会社法299条4項)。
実務上、取締役会未開催や一部取締役の不参加、取締役会議事録未作成などが問題となることがあります。
(2)計算書類等の承認手続の欠落
計算書類や事業報告等は、監査役の監査を経た上で取締役会の承認を受ける必要があります(会社法436条3項)。
監査役は監査報告を作成し(会社法施行規則129条、会社計算規則122条)、取締役会は議事録を作成する必要があります。
(3)招集通知の記載不備
取締役会設置会社では、招集通知は書面で行う必要があり(会社法299条2項)、その内容は取締役会決議事項に基づきます(会社法299条4項、298条1項各号)。特に、通知した目的事項以外は決議できない点が重要です(会社法309条5項)。「その他」など曖昧な記載では、取消事由となる可能性があります。
また、役員選任議案では、人数や候補者の概要(略歴等)も明示する必要があります。
(4)招集通知期間の不遵守
非公開会社では原則1週間前まで(会社法299条1項)、公開会社では2週間前までに通知を発送する必要があります。
「1週間前」とは中7日を確保する意味であり(例えば6月30日(水)が株主総会日だとすれば、中7日前の6月22日(火)までに招集通知を発送しておく必要があります)、期間不足は軽微でも取消事由となり得ます。
なお、通知は株主名簿上の住所に発送すれば足り(会社法126条1項)、到達までは不要です。発送日を裏付けるため、発送記録の保存が望まれます。
(5)計算書類等の未提供
定時株主総会では、計算書類、事業報告、監査報告を株主に提供する必要があります(会社法437条)。
これらを事前に提供せず当日配布のみとする運用や、一部書類の欠落は、取消事由となるおそれがあります。
(6)委任状の未整備
代理人による議決権行使には委任状の提出が必要です(会社法310条1項)。
定足数確保の観点から、招集通知に委任状を同封する実務が有用です。
(7)通知対象株主への未送付
招集通知は議決権を有する株主に対して行います(会社法299条1項、298条2項かっこ書)。
基準日制度(会社法124条)を定款で定めている場合は、当該日時点の株主名簿記載の株主に送付すれば足り、住所も名簿上のもので足ります(会社法126条1項)。
もっとも、送付漏れがあると取消事由となり、重大な場合には不存在と評価される可能性もあります。
① 所在不明株主
5年以上通知が到達しない場合は送付不要となります(会社法196条1項)。5年到達していないことを示す郵便記録の保管が重要です。
② 相続が生じた場合
相続任人から名義書換がない限り、名簿上の株主宛に送付すれば足ります(会社法126条1項)。ただし、相続人から、会社へ権利行使者指定がある場合はその者への送付も検討されます。
③ 名義株の問題
名簿上の株主と実質株主が異なる場合、名簿株主に通知することは当該者を株主と扱う事情となり得るため、会社の立場に応じた慎重な対応が必要です。
「非上場会社のための株主管理・株主対策Q&A」会社法を遵守した株主総会①
「非上場会社のための株主管理・株主対策Q&A」会社法を遵守した株主総会②
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