事業承継の選択肢としてのM&A

この記事を読んでくださっている方の中にも、コロナ禍で、会社の業績が厳しい方がいらっしゃるかもしれません。ワクチン接種も徐々に広まるでしょうから、闇はいつまでも続かないはずです。創意工夫などで、この危機を何とか乗り切っていただくことを心より願っております。

コロナは事業を継続する心を折ってしまうようで、2020年の休廃業・解散件数は4万9698件と前年比14.6%も増加しているとのことです(東京商工リサーチ調べ)。

そもそも後継者難であったところに、コロナ禍において先行きが不透明であることが、休廃業・解散件数が大幅に増加した理由なのでしょう。

事業承継では未だ親族間承継が王道という考えも根強いでしょうが、お子様が大手企業のサラリーマンになるなど後継者難の会社が多いのが実際だと思います。幹部従業員に承継させるについても、株式買い取り資金や連帯保証の問題があり容易ではありません。

そこで、M&A、すなわち会社を売却するという選択肢が浮上します。後継者難で廃業するよりは、会社を売却するべきです。従業員の雇用が守られ、社会経済的に有益ですし、会社オーナー自身株式売却代金を得ることができ、いわゆるハッピーリタイアメントを実現できるかもしれません。

事業承継の場面に限られず、中小企業のM&Aが大幅に増加しているというのが私の実感です。そして、この傾向は今後も続いていくものと予想しています。

この点、うちの会社は大した会社じゃないので誰も買ってくれるはずがない、と思っていらっしゃる経営者の方も多いと思います。

しかし、チャレンジすることまであきらめる必要はありません。買い主にとっては、経営者も自覚しない魅力がある場合があります。それは技術であったり、優良企業の口座であったり、スケールメリットかもしれません。廃業する前に一度は会社の売却にチャレンジするべきです。

先に述べた東京商工リサーチの調査によると、2020年に休廃業・開催した企業のうち直前期の決算が黒字であった企業が6割超であったとのことです。黒字会社が唯々廃業していくのは、社会経済上も大きな損失です。

もちろん、M&Aは、親族間承継、従業員承継のいずれも困難な場合に初めて選択肢となるものではありません。もっと積極的に会社の売却を考慮するべきです。

後継者がいないという場合だけでなく、後継者候補の能力に疑問を有しているのであれば、生活が懸かっている従業員のこと、さらには重い責任を負う後継者候補のことを考えれば、尚更経営能力のある第三者への売却を試みるべきでしょう。

次に、会社の売却を考えた場合、誰に相談するべきかという問題があります。

最初に、信頼関係のある顧問税理士や弁護士に相談するべきでしょう。また、取引金融機関に相談することも考えられますし、親しい同業他社に相談する例も多いようです。

その他M&Aのマッチング(仲介)を業としている会社に相談するという選択もありますが、その場合は多くのマッチング会社から十分に説明を受け、契約先は慎重に選択するべきです。

経営者ご自身の立場と仲介者の利益がどこまで一致しているのか意識して頂き、できる限りご自身の利益のために動いてくれる専門家のアドバイスを求めて下さい。

ページトップへ戻ります