相続の手引き㊾-相続人の配偶者、子が被相続人から受益した場合

【事例】

Xには妻A、子B、Cがいる。

Xは、Bの妻であるWの生活を援助するため、10年にわたり毎年50万円ずつ援助していた。

被相続人が相続人の配偶者や子らに対して贈与をしたとしても、相続人の配偶者や子は共同相続人ではありませんので、民法903条に定める「共同相続人中に、被相続人から・・・贈与を受けた者があるとき」には該当しません。そのため、当該贈与については、持戻しの対象とはなりません。

もっとも、贈与の経緯、贈与されたものの性質、贈与により相続人が受けた利益等の具体的事情を考慮して、配偶者や子に対する贈与であっても実質的には相続人に対する贈与であると評価できる場合には、当該相続人の特別受益として持戻しの対象となるものと解されます。裁判例にも「特別受益として持戻しの対象となるのは,共同相続人に対する贈与のみであるから,その親族に対して贈与があったことにより共同相続人が間接的に利益を得たとしても,これは特別受益には該当しないものであり,これが実質的に共同相続人に対する贈与に当たると認められる場合にのみ,当該相続人に対する特別受益となるものというべきである」と述べるものがあります(東京高判平成21年4月28日家月62巻9号75頁)。

そうすると、上記事例では、原則としてWに対する贈与は持戻しの対象とはなりませんが、実質的にみてBに対する贈与に当たると認められる場合には、Bの特別受益となり持戻しの対象となるものと考えられます。

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