相続の手引き53-持戻しの免除Ⅱ

⑷ 配偶者に対する遺贈・贈与に関する推定規定

婚姻期間が20年以上である夫婦の一方が他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、持戻しの免除の意思表示があったものと推定されます(民法903条4項)。配偶者居住権の遺贈については、民法1028条3項で民法903条4項が準用されています。

この規定が設けられた理由としては、①婚姻期間が20年以上の夫婦の間では、贈与の対象となる居住用不動産は長期間にわたる夫婦の協力のもとで形成された財産であり、相手方配偶者の老後の生活保障を意図して贈与されるものであるから、持戻しの対象としない意思である蓋然性が高いこと、②残された他方配偶者の生活保障を厚くするのが望ましいことが挙げられています。

推定規定の適用対象は、配偶者に対して居住用不動産が遺贈・贈与された場合に限られます。金融資産などのその他の財産については持戻しの免除の意思の推定は働きません。

被相続人が遺贈・贈与の目的物を居住用動産とすることとして遺贈・贈与をしたかの基準時は、遺贈・贈与をした時点とされています。また、遺贈・贈与の時点で当該目的物が現に居住の用に供されていなかったとしても、遺贈・贈与の時点で近い将来において居住の用に供する目的で遺贈・贈与をした場合には、推定規定の適用があると解釈できると考えられています。

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